「お腹を凹ませたいから、とりあえず腹筋を頑張る」。もしあなたがそう思っているなら、残念ながらその努力は遠回りかもしれません。最新の研究でわかった、科学的にお腹を凹ませるための「新常識」を解説します。
衝撃の事実:腹筋をしてもお腹の脂肪は減らない?
多くの人がやりがちな「お腹だけを鍛える」トレーニング。しかし、医学的な結論は意外なものでした。
- ✓「部分痩せ」はほぼ不可能:複数の研究により、特定の部位を動かしても、その周りの脂肪が優先的に燃焼することはないことが証明されています
- ✓脂肪燃焼は全身で起こる:脂肪が減る仕組みは、全身のエネルギー収支(摂取カロリー<消費カロリー)の結果として起こります
Vispute ら(2011年)の研究では、6週間腹筋運動を行ったグループとそうでないグループを比較しましたが、腹部脂肪量に有意な差は見られませんでした。脂肪は全身から均一に減少し、特定部位だけを狙って燃やすことは不可能です。 出典:Vispute SS et al. (2011). The effect of abdominal exercise on abdominal fat. J Strength Cond Res, 25(9), 2559-2564.
お腹痩せを左右する「3つの新しい視点」
お腹を凹ませるには、腹筋運動よりも以下の3点に注目すべきです。
① 「内臓脂肪」は落ちやすい
お腹の脂肪には、指でつまめる「皮下脂肪」と、内臓の周りにつく「内臓脂肪」があります。皮下脂肪に比べて、内臓脂肪は代謝が活発で「落ちやすい」という特徴があります。
Ohkawara ら(2007年)のメタ分析では、有酸素運動が内臓脂肪を皮下脂肪よりも有意に減少させることが示されました。特に週150分以上の中等度有酸素運動が内臓脂肪の減少に効果的です。 出典:Ohkawara K et al. (2007). A dose-response relation between aerobic exercise and visceral fat reduction: systematic review of clinical trials. Int J Obes, 31(12), 1786-1797.
② 「腸内環境」が見た目を変える
最近の研究で、腸内細菌のバランスが脂肪の蓄積や代謝に深く関わっていることが判明しました。食物繊維を積極的に摂取することで、腸内環境が整い、結果として腹囲(ウエスト)の減少や代謝改善に繋がることが近年の研究で報告されています。
Hairston ら(2012年)の研究では、食物繊維の摂取量が多い人ほど5年後の内臓脂肪増加が抑制されたことが示されました。特に水溶性食物繊維10gの増加ごとに、内臓脂肪の増加率が3.7%減少するという結果が得られています。 出典:Hairston KG et al. (2012). Lifestyle factors and 5-year abdominal fat accumulation in a minority cohort: the IRAS Family Study. Obesity, 20(2), 421-427.
③ 「ストレス」がお腹に脂肪を溜める
頑張っているのにお腹だけ凹まない……その原因はストレスかもしれません。ストレスを感じると分泌される「コルチゾール」は、お腹周りに内臓脂肪を溜め込む性質を持っています。リラックスする時間を持つことも、立派な「お腹痩せ」の一環です。
Epel ら(2000年)の研究では、慢性ストレス下でコルチゾール反応性の高い女性は、腹部内臓脂肪が有意に多いことが示されました。コルチゾールは脂肪細胞のコルチゾール受容体(特に腹部に多い)を活性化し、内臓脂肪の蓄積を促進します。 出典:Epel ES et al. (2000). Stress and body shape: stress-induced cortisol secretion is consistently greater among women with central fat. Psychosom Med, 62(5), 623-632.
日常の動作「NEAT」が最強の武器になる
ジムでの1時間の運動よりも、実は「NEAT(非運動性熱産生)」、つまり日常の何気ない活動が重要です。
- ✓エレベーターではなく階段を使う
- ✓デスクワークの合間に立ち上がる
- ✓ひと駅分歩く
- ✓家事をテキパキとこなす
Levine ら(2005年)のサイエンス誌掲載研究では、非肥満者と肥満者のNEATの差が1日約350kcalにのぼることが判明しました。座位時間の多い現代人においては、NEATの増加が体重管理において運動以上に重要な役割を果たすと結論付けられています。 出典:Levine JA et al. (2005). Interindividual variation in posture allocation: possible role in human obesity. Science, 307(5709), 584-586.
【最新版】お腹痩せを叶える5つのステップ
これらを踏まえた、科学的に正しいアプローチは以下の通りです。
- ✓カロリー赤字を作る:腹筋100回より、食事の微調整(1日200〜300kcalのマイナス)
- ✓有酸素運動(週150分目安):ウォーキング・サイクリング・水泳などで内臓脂肪を効率よく燃焼
- ✓筋トレ(週2回):スクワット・デッドリフトなど全身の大きな筋肉を鍛えて基礎代謝をキープ
- ✓食物繊維を増やす:野菜・豆類・海藻・きのこで腸からお腹をスッキリさせる
- ✓睡眠とストレス管理:7時間以上の睡眠とリラックス習慣でホルモンバランスを整える
- ✓部分痩せ(スポットリダクション)は科学的に不可能
- ✓内臓脂肪は皮下脂肪より落ちやすい——有酸素運動を活用しよう
- ✓腸内環境を整える食物繊維が腹囲を減らす鍵
- ✓コルチゾール(ストレスホルモン)がお腹に脂肪を溜める——休息も戦略
- ✓NEATを増やす日常習慣が、ジムより大きな効果をもたらすこともある
お腹周りは、生活習慣が最も正直に現れる場所です。だからこそ、正しい知識でアプローチすれば、体は必ず応えてくれます。腹筋運動でお腹を割る前に、まずは「内側の環境」を整えましょう。腸内環境を良くし、ストレスを溜めない生活を送るだけで、お腹の見た目は驚くほど変わりますよ。
- Vispute SS et al. (2011). The effect of abdominal exercise on abdominal fat. J Strength Cond Res, 25(9), 2559-2564.
- Ohkawara K et al. (2007). A dose-response relation between aerobic exercise and visceral fat reduction: systematic review of clinical trials. Int J Obes, 31(12), 1786-1797.
- Hairston KG et al. (2012). Lifestyle factors and 5-year abdominal fat accumulation in a minority cohort: the IRAS Family Study. Obesity, 20(2), 421-427.
- Epel ES et al. (2000). Stress and body shape: stress-induced cortisol secretion is consistently greater among women with central fat. Psychosom Med, 62(5), 623-632.
- Levine JA et al. (2005). Interindividual variation in posture allocation: possible role in human obesity. Science, 307(5709), 584-586.